近年になって、医療×AIという考え方が出始めています。
様々なニュースがありますが、大きく分けて
- 画像分析(放射線画像診断、病理診断)
- 診断(検査値や症状から診断)
- 投薬(診断された疾患に対する投薬)
の3つにスポットが当たっているように感じます。
医師の仕事のうち、これらの業務について「人工知能によって大きく仕事内容が変わるのではないか」と言われています。
中には「仕事が無くなるのでは?」という意見もチラホラ。
医師の仕事はAIによって将来どうなる?
では、医師の仕事はAIによってどう変わるのでしょうか。
僕も気になっていくつかの書籍を読んでみましたが、辿り着いた1つの結論は
- 医師の仕事内容はAIによって変化するが、決して医師の仕事が無くなるわけではない
という事です。
なぜか。
まず仕事の一部は機械によって完全代替されるものの、別の仕事は残ります。
こちらは通常通り、人間が行います。
そして、既存の仕事が無くなるようなテクノロジーが生まれる時は、新たなテクノロジーによって新たな仕事も生まれます。
血液検査は自動化されたが、技師の仕事は無くなっていないのはナゼ?
例えば血液検査。
昔は手動で、顕微鏡を見ながら赤血球・白血球の数を数えていたそうです…。
今はもちろん全自動で、電解質やタンパク質まで測定できます。
では検査室の人間は、血液検査が機械によって取って代わられた事によって職を失ったのでしょうか?
答えはノーだと予想します。
血液検査を自動で行う機械が登場した頃、同時に超音波によるエコー診断が臨床で使われ始めました。
血液検査を手動でやっていた技師さん達は、おそらくエコー診断の技術を学んで画像検査の仕事をやり始めたのではないでしょうか。
医療という世界においては、テクノロジーが進化すればするほど、今まで見えないものが見えるようになります。
それが数値化されたり、画像にされ情報として処理されたり。
結果的にそれらを処理する仕事が生まれます。
テクノロジーの進化は、既存の仕事を確かに奪いますが、同時に新たな仕事もポンポンと生まれるわけです。

あらゆる仕事はテクノロジーによって役割を奪われる
医療に限らず、あらゆるサービスは自動化してきました。
例えば、火起こし。
昔はキッチンで火を起こす事だって手動でした。
今はガスをひねれば一瞬で火をつける事ができます。しかし大昔は、火起こしで火を起こし、木を燃やし火を起こしていました。
例えば、印刷。
今は自動のインクジェットプリンターで、電力を動力にして自動で印刷できます。しかし昔は活版印刷で手動による印刷を行なっていました。
他にも
- 電話交換
- 駅の切符確認
- ボーリングのピン置き
などなど。
電話は、電話交換番という仕事に従事している人がいて、彼らが「どなたにお繋ぎ致しますか?」と尋ねて、手動で電話を繋いでいたそう。
駅の切符確認は、今は交通系ICで自動化しましたね。
ボーリングのピンも、昔は奥に人間がいてピンを手動で配置していたそうですが、当然のように今の時代は自動で機械がやってくれます。
過去を振り返ってみても、あらゆる既存の仕事はテクノロジーによって役割を奪われ続けて来ました。
それによって
- 電話交換しかできない人
- 切符を切る事しかできない人
- ボーリングのピン置きしかできない人
は、確かに困ってしまったでしょう。
しかし実際にはそんな人はいなくて、別の仕事に従事するか、過去の経験を生かして
- 自動で電話をつなぐシステムを作る
- 自動で駅の決済を行えるシステムを作る
- 自動でボーリングのピンを置く機械を作る
という、新しいテクノロジーを開発する仕事に従事しているか、どちらかでしょうね。
重要なのは、将来に備えて仕事を変化させる事
テクノロジーによって医師の仕事内容は、確実に変化します。
しかしながら、医師の仕事がいきなりゼロになってしまう、という事はまず無いでしょう。
血液検査は自動化され、エコーも技師さんにアウトソースする現代ですが、医師の仕事はてんこもりです。
減るどころか増えているのでは…。
仮にもし、上記の例で言う「手動で行う血液検査しかできない」人がいたとしたら、その人は確実に淘汰されます。
重要なのは、テクノロジーの変化に対応する事ではないでしょうか。

医者の仕事を奪うのはAIでは無い
AI、テクノロジーの進化は確実に医者の仕事に影響を与えるでしょう。
しかしながら、医者の仕事を奪うのはAIではなく、人口動態だと思っています。
つまり、人口減少によって「客である患者がいなくなる」事。
AIの影響なんかよりも、人口動態による顧客減少の方が、医者の仕事を奪うと思います。
どちらかというとこちらの方が、抗いにくく対抗策が必要。
おそらく将来的には、予防医学を使った「病気になる前の健康ビジネス」がさかんになるでしょう。
現状の「既に病気になった人」だけを対象とした医療だけでは、パイの縮小の影響を受け続けますからね。
「将来が安泰なのか、不安です」若手医師の発した言葉
少し前、初期研修医と将来についての話をしました。
彼は放射線科に進むらしく、画像診断ではなく放射線治療の方向に進むとの事。
彼曰く、放射線科に入局する若手は減少していて、AI参入を嫌忌してこぞって治療を専攻するらしいです。
正直なところ、将来が安泰なのか、不安です
と漏らしていました。
彼のように、若手は時代の変化に鋭敏に反応します。
それは逆に言えば、時代の変化に対応できているという解釈もできます。
彼のような人間は、仮に既存の仕事がテクノロジーによって奪われても、また別の仕事を見つけて生き続けるでしょう。
まとめ
AI導入により、医師の仕事は確実に変化する。
しかしいきなり仕事が無くなる事は無い。
なぜならば
- 既存の仕事で人手が必要な物は残る
- 同時に新たな仕事も生まれる
から。
最も重要なのは、変化に対応しテクノロジーを味方につけ、自分のできる事を増やす事である。
また日本で働く医師にとって、仕事を奪いかねない最大の敵は
- 人口減少
である。