家は買うべきか借りるべきか。
幾度となく繰り返されて来た論争のように思いますが、実際のところどうなのでしょうか。
そもそも「どちらが良いか」という命題について、正確に答えるには何について考えるべきでしょうか。
医師が家を購入する事、賃貸のまま住む事、どちらにもメリットとデメリットがあります。
「どちらが良いか」という質問の答えるためには、どちらの方法が自分にとって「デメリットを上回るメリットがあるか」という事を知る必要があります。
そのためには医師が
- 家を購入する事のメリット・デメリット
- 賃貸を借りて家賃を支払う事のメリット・デメリット
について把握しなければなりません。
医師が家を購入するメリット
医師が家を購入するメリットは、やはり周りを気にしなくて良い事でしょう。
集合住宅に住んでいると、どうしても上下階やお隣さんに対して物音を立て過ぎたりしないよう気にしたりしなければなりません。
お子さんがいる家庭であれば、なおさら大きなメリットだと感じるはずです。
また医師は夜遅くに帰って来たり、夜緊急で呼ばれて夜中に家を出て行く事があると思います。
その時のバタバタした音、ガタガタした音が周囲の人の迷惑になる可能性もあります。
そこをあまり気にしなくて良いというのも、少し窮屈さが無くなって良いかもしれません。

医師が家を購入するデメリット
一方医師が家を購入する事のデメリットは大きく分けて2つあります。
- 転勤に伴う追加家賃の発生
- 銀行からの与信を使い切ってしまう
の2つです。
1、転勤に伴う追加家賃の発生
1つめは転勤に伴う追加家賃の発生リスク。
上からの命令でやや遠方に転勤した際、単身赴任になる可能性があります。
そうすると家の購入費とは別に賃貸を借りて家賃を支払う必要があるので、経済的なデメリットは大きいですね。
2、銀行からの与信を使い切ってしまう
2つめは銀行からの与信を使い切ってしまう事。
開業したり不動産投資をしたり、自分で何かビジネスを始める際、多くの場合は銀行から借入金が必要になります。
その際に家を買っていると、追加のローンを組みにくいというデメリットがあります。
もちろん家を担保にローンを借りると思いますが、銀行が提示する担保額はおそらく最初に組んだローンよりも低い、安く見積もられているはずです。
結果的に、医師が家をローンで購入すると、銀行からの与信を毀損します。
後で
ビジネスを始めたい
不動産投資をしたい
と思ってもそれは不可能です。正確に言えばその確率が高い。
もちろんローンの額や返済速度、年収や配偶者の職業などにもよります。
じゃあ現金で購入するのが良いかというと、そうではありません。おそらく現金購入が一番悪手です。
今の時代は金利も低く、住宅ローンに対して減税措置が取られています。
それらのメリットを享受せず、税引後のキレイな手持ちの現金を大量に投入し一括で投入することは、税制上不利です。

医師が賃貸を借りて家賃を支払うメリット
家を購入する選択肢の逆で、転勤に伴う追加家賃の支払いリスクが無い事、銀行の与信を毀損しない事です。
また勤務先の病院によっては家賃補助が出ます。
極端な話、与信を使って不動産投資をして家賃収入を得つつ、自分は賃貸に住んで半分病院に家賃を支払ってもらう、というのが経済的にはオイシイです。
ちなみに自分は賃貸物件に住んでます。
病院が家賃補助で半分払ってくれてます。
信用余力が余ってるんで、アパート一棟買いました。
普通に考えて、これが今の最適解。
医者が増えて家賃補助削られたら話は別ですが。
— ラス (@3n4rs) 2019年5月3日
そういう意味でも、経済的には賃貸派がおそらく有利だと僕は思っています。
医師が賃貸を借りて家賃を支払うデメリット
家を建てる選択肢の逆です。
基本的に集合住宅なので、周囲の事を気にしながら生活しなければなりません。
よく勘違いされているのですが、家賃を支払った後に家が残らない、という事は特別デメリットにはなりません。

というのが不動産屋の口説き文句ですが、これは一概にそうとは言えません。
家を購入×ローン返済後=賃貸に対して家賃分有利、とは言い切れない
先ほど

という不動産屋の口説き文句は、一概には言えないと述べました。
その理由を解説します。
家の値段について
- 家の価値をX(円)
- Xのうち土地の値段がY(円)
- 建物の値段がZ(円)
だとします。
購入時は
X=Y+Z
となっています。
基本的に建物部分は長く済めば価値が無くなります。法律上は
- 木造22年
- 鉄骨34年
- RC(鉄筋コンクリート)47年
で建物の価値はゼロになります。
将来ローンを支払い終わった際、建物部分の価値がゼロになっていたとして
将来のZ=0
とすると、残りの家の価値は
X=Y
となります。
つまり帳簿上はローンを支払った後に残った資産は土地のみです。
その土地は将来値上がりしているか、値下がりしているかのどちらかで、土地の値段が値上がりしていれば得で、値下がりしていれば損です。
建物部分に支払ったZ(円)は、居住年数分の年月をかけて価値を減らしていきます。
つまり実質的には、Z(円)を居住した年数で割り、さらに12で割った値が「家を購入した時の実質的な家賃」という事になります。
その家を売るとすれば、土地として売るのなら「将来のY」から解体費用を差し引いた額で売る事ができます。
ですので家を購入したからといって、ローンを支払い終わって残った家の分得をするとは限りません。
その時の土地の値段、建物部分の価格から算出した「実質的な家賃」と、周辺地域の賃貸相場との比較になるのですから。
具体例
下記のような家を購入したとします。
- 25年ローン
- 木造新築一戸建て
- 購入総額7000万
- 内訳は土地が2500万、家が4500万
25年後の今、土地の値段は1500万だとします。家の価値はゼロです。
帳簿上の価値の毀損は
7000万ー1500万=5500万
25年なので、月あたりに変換しなおすと
5500万/(12×25)=18万3千円
毎月18万3千円の家賃を、この家に住むために支払っていた事になります。
仮に家賃補助が病院から半額(上限10万/月)くらい出ていたとしたならば、家賃28万くらいの家に住んでいたのと同じ計算になります。
流石にこの場合だと、少なくとも経済的な観点からすると賃貸の方が有利そうです。
土地の割りに建築費が高過ぎですね、この場合は。
将来的にも、土地が値下がりすればそれが実質的には差金分がキャッシュアウトしていく事になるため、ローンの支払いを終えても実質的には家賃を支払っている、と考えるべきです。
ローンを返済し終わる頃には、建物部分も徐々に傷んで来ます。
追加でリフォームをしたり塗装をしたり、木造ならシロアリ対策をしたり…とメンテナンス費用も上乗せ。
もし家でなくマンションを購入した場合は、加えて
- 修繕積立金
- 管理費
も毎月取られてしまいます。
これが結構大きな落とし穴なので、マンションを購入検討している医師は注意しましょう
「家購入vs賃貸」論争の経済的な正しい比較は、これらを加味した上での
- 「月あたりに直した平均の資産毀損額」が、周辺の賃貸相場と比べてどちらが高いのか
という事が「家購入vs賃貸」論争の経済的な正しい比較になります。
つまりこれを正確に予測するのは、ほぼ不可能です。
なぜって…未来の土地の値段なんてわかりませんからね。

医師は家を購入するべきか、賃貸を借りて家賃を支払うべきか
結論からすれば、僕個人としては医師という職業の人は賃貸が良いと思います。
家を買わずに銀行から融資受け、事業を始めれば家賃も一部経費に参入できます。
勤務先の病院からもらえる補助の事も考えると、経済的にはかなりメリットがあります。
仮に家を購入するのであれば、自分の住んでいる街や購入しようとしている土地についてよく調べるべきです。
- 人口が増えているのか減っているのか
- 増減があるならどれくらいなのか
- 雇用を生む会社や工場はどれくらいあるのか
- 水害や土砂崩れなどの災害に巻き込まれやすくないか
などなど。
現段階での土地の値段を大まかに把握する事は、国税庁の路線価のサイトで見ることができます。
参考にしましょう。
もし家ではなくマンションを購入しようか検討している場合、キチンと見合った額のマンションにしましょう。
そして安く売り出されている戸建物件を、自分好みにリフォームしてトータルコストを抑える、という方法もアリだと思います。
ある程度築年数が経っている物件だと、ほぼ土地の値段だけで売っている家もあります。
土地や土地付きの戸建を探すなら下記のサイトが便利です。
売り出されている戸建物件の、土地価格と建物価格の適正価格を算定するのには、不動産投資の知識が必要になります。
丸裸で挑むのではなく勉強しましょう。