不動産投資において最も重要とも言えるのが、キャッシュフローです。
キャッシュフローとは、読んで字のごとくお金の流れの事。
一言で言ってしまえば「不動産投資による毎月の収支」の事です。
不動産投資では、月単位で家賃が入ってきます。そこからローン支払いをし、修繕のためのお金も別で残して、残ったお金が手元に残ります。
家賃によるプラス、ローン支払いによるマイナス、修繕のためのお金のプール金によるマイナス、これらの収支の事を不動産投資における「キャッシュフロー」と呼んでいるわけです。
キャッシュフローがマイナスの不動産投資は心が折れる
なぜキャッシュフローが大事なのか。
1つはメンタル面。毎月のキャッシュフローがマイナス、つまりポケットマネーから赤字を補填しないといけない不動産投資は、心が折れます。
実際はそれほど損ではない可能性もありますが…。
例を見てみましょう。
(例)物件価格2400万、利回り10%、20年ローン
毎月のキャッシュフロー=+20万(家賃)ー15万(ローン支払い)ー6万(税金、修繕、諸経費)
=−1万/月
毎月1万円の赤字は、20年で240万の赤字ですが、2400万の物件がローン残債無しで手に入るので、トータルとしてはプラスになっているはずです。
仮に将来、物件が値下がりしても、240万円以上の価値が残ればプラスになります。
毎月のキャッシュフローがマイナスだからといって必ずしも損ではないわけですね。
それでもポケットマネーを使うのは良い気分ではありません。
不動産投資に対する熱意を保つためにも、毎月のキャッシュフローはプラスでありたいですね。
不動産投資のキャッシュフローをシミュレーションしよう
毎月のキャッシュフローをプラスにするために、良さそうな物件があれば、まず資料からキャッシュフローを把握する必要があります。
毎月のキャッシュフローを構成する要素としては
- 家賃
- ローン支払い
- 税金、修繕積立
の3つです。
この3つをザッと調べる事で、毎月のキャッシュフローを把握する事ができます。
1、プラスのキャッシュフローを把握しよう
まずHOMESから、物件周辺地域の似た様な物件の家賃を把握しましょう。
もしあまりにも物件が大量にある場合、少し低い値段にすれば埋まると想定しましょう。
次にHOMES見える賃貸経営で、その地域の平均空室率をチェック。
これらによって得られた
想定家賃×(100ー空室率)/100
が、毎月入ってくるキャッシュフローになります。
ここをサボって、業者から送られてくるレントロールを鵜呑みにすると、痛い目をみます。なぜなら高めの家賃で入居している人がいるからです。
2、マイナスのキャッシュフローを把握しよう
次に、毎月のローン支払い額を想定しましょう。
毎月のローン支払い額は
- 金利
- 返済年数
によって変わります。
これらの要素を、銀行の融資担当者にザッと質問してみましょう。
僕が電話する時は、いつもこんな感じです。

もし仲の良い銀行があればそこでも良いですし、銀行に友達がいれば良いですね。
そうでない場合は、物件の近くや今住んでる家の近くの、大きめの支店が良いでしょう。
そしたらローン計算ページで、借入総額と金利と年数を入力し、毎月のローン支払い額を計算しましょう。
例えば3500万を20年で金利2%で借りると、毎月17万7000円をローン支払いとしてしなければならない、と出てきます。
毎月の収支=キャッシュフローを把握しよう
ここまでくれば、あとはこれらを合算するだけです。
1で得られたプラスのキャッシュフローから、2で得られたローン支払いを差し引きます。
また修繕、税金などは物件によって大きく異なりますが、僕は概算のため「家賃収入の20%程度」としています。
では早速、例題です。
***
築17年重量鉄骨造、6室、3500万、満室時想定利回り12%(1部屋あたり5.8万/月)。
HOMESからは、家賃相場的には妥当な額で、5.5万なら競合物件を出し抜けそう。
平均空室率は90%の地域だった。
5.5万×6×0.9=29万7000円
が想定される家賃。ここから20%の税金と修繕を引くと
29.7×(1ー0.2)=23万7000円
となり、1月あたり23万7000円程度の家賃が入ってきそう。
銀行にヒアリングすると、2%25年で借りる事ができそうだ。
ローン計算からは、毎月14万8000円をローン支払いとして支払う計算になる。
毎月のキャッシュフローは
23.7万ー14.8万=8.9万
毎月約9万円のプラスキャッシュフローになる。
年間108万円で、借入総額3500万円の約3%という事になる。
***
という感じです。
概ね借入総額の3%程度、年間手残りがあれば良いとされているので、まあ無くはないですかね。
銀行の返済額も、満室時の半分くらいで、普通にやれば毎月のキャッシュフローがマイナスになる事は無いでしょう。
ただ、このローンは重量鉄骨の耐用年数である34年を超えて融資が降りている、つまり融資条件が良いため成り立っているキャッシュフローの計算になります。
もう少し物件価格を下げて、融資期間が20年で成り立つくらいの値段で購入したいところです。
ある銀行では「融資期間は法定耐用年数以内、入居率70%、金利5%でもキャッシュフローが赤字にならない」事がクリアの条件になっているそうです
しかし、これでは税金部分が概算ですので、例をあげてさらに詳しく見て見ましょう。
物件価格:3,300万円
諸経費:200万円
借入金額:3,300万円
自己資金:200円
金利:固定1.15%
借入期間:30年
建物価格:1960万円
これは、僕の購入した2棟目の物件のスペックです。
潜在総収入(GPI)
=3,420,000円空室率=10%とし、差し引くと
実行総収入(EGI)
=3,078,000円運営費(Opex)=10%とし、さらに差し引くと
営業純利益(NOI)
=2,770,200円年間負債支払額(ADS)
=1,301,160円税引き前年間手残り(BTCF)
=1,469,040円減価償却費は
1960万/30年=65万円
であり、年間金利支払額は概ね36万円なので、合計101万円は控除されるため
Tax=(NOIー1,010,000)×0.3
=528,060円税引き後年間手残り(ATCF)=BTCFーTax
=940,980円【投資効率】
キャップレート(NOI/物件価格)=8,39%
ローン定数K%(ADS/ローン金額)=3.94%
総収益率(FCR)=NOI/総投資額=7.91%
レバレッジ判定、FCR>K%により、ポジティブレバレッジ【安全性】
負債支払い安全率(DCR)=NOI/ADS=2.13
損益分岐稼働率(BE%)=(Opex+ADS)/GPI=47.0%
と、なります。
投資効率は、基本的にレバレッジ判定がポジティブである事が必須です。
安全性は、DCRが1.3以上あればセーフとされていますが、僕の中では1.5以上を目指しています。損益分岐稼働率は、可能なら75%以下に抑えたいところです。
不動産投資のキャッシュフローを改善するには
不動産投資におけるキャッシュフローを改善するにはいくつか方法があります。
物件価値を高め、満室にする事はもちろんですが、それ以外にもあります。
具体的には
- 安く買う
- 金利を低くする
- 融資期間を長くする
- 自分の社会的属性を高める
などです。
なるべく安く、金利を低く、融資期間を長くする事で、毎月のキャッシュフローは改善されます。
後から変える事ができないのは物件価格なので、必ず自分の計算の範囲内で買うようにしましょう。
納得できない値段では決して買わないように。
それまでの労力を考えると、つい妥協して買ってしまいたくなるのですが、そこはノー。また新しい物件を探しましょう。
そして金利を低く、融資期間を長くするためには
- 既存の銀行へ融資条件緩和の相談
- 別の銀行へ借り換えを行う
- 自分自身の社会的属性を高める
などの方法があります。
銀行も商売なので、客は取り合いです。なるべく競合させましょう。
また自分の本業の年収を高めたり、より信頼度の高い大企業に転職したり、属性を高める事も有利な融資を引っ張る上で重要です。
不動産投資初心者ほど、初期のキャッシュフローが大事
どんな本を読んでも「不動産投資初期はとにかくキャッシュフローが大事だ」と書いてあります。
これには理由があります。
物件をしばらく持っていると、何かしらの理由で大金をはたいて修繕しなければならない事態に将来陥る可能性があります。その時に資金が枯渇していると、修繕が間に合わない→入居が決まらない→また資金が枯渇する、という負のスパイラルに陥ってしまうわけですね。
それを防ぐためにも、初期のキャッシュフローで生まれた資金をきちんとプールしておく必要があります。
何かあったらそこから資金を捻出し修繕、入居を決めてまた資金のプールを始める、という正のスパイラルへと持っていかなければなりません。
手持ちの資金がたんまりある人なら良いですが、概ね物件価格の20%程度の資金は常にプールしておいた方が安心、とされています。
なるべくそうなるまで、キャッシュフローをプラスに保って資金をプールさせておきましょう。