地方の不動産投資におけるリスクといえば、まず誰にでも思い浮かぶのが人口減少でしょう。
人口が減少すれば、賃借人が減る事になり、不動産というハコは相対的に余ってしまう。
当たり前ですね。
しかしながら、地方の不動産投資におけるリスクを、ただ漠然と人口減少だと捉えているだけでは、危険です。
真のリスクを捉えきれていない可能性が高いからです。
地方不動産投資は利回りが高い理由
そもそも、なぜ地方の不動産は利回りが高いのでしょうか?
理由は簡単、人口減少が織り込まれているからです。
将来人口減少が確実な地方と、人口減少が無いか軽微な都心で、同じ利回りで同じスペックの不動産があれば、当然都心の不動産を投資家は購入するはずです。
人口減少によるリスクプレミアム分、地方の不動産はディスカウントされているため、相対的に利回りが高く見えるだけです。

逆に言えば、地方でも人口減少が軽微な地域は存在しており、そういった地域の人口減少リスクプレミアムが過剰評価されている(不当に価格が低くなっている)不動産もあり、そういう物件は都心の富裕層は見向きもしませんから、美味しいです。
不動産投資の「地方高利回りvs都心低利回り」は、引き分け
いきなりですが、あなたがやるならどちらの不動産投資を行いたいでしょうか?
- 物件A:1000万円、利回り5%、都心
- 物件B:1000万円、利回り15%、地方
利回りだけで判断するならば、物件Bを選んでしまいそうになりますよね。
でもなんだか手を出すには心理的障壁を感じませんか?具体的には
- 将来一体いくらで売れるの?
- ちゃんと賃借人はいるの?
- この利回りは維持できるの?
などでしょう。
ここで、細かいシミュレーションをしてみます。以下の条件とします。
5年後に共に売却
物件A、900万円で売却
物件B、土地として500万円で売却、解体費に250万円
さて、この5年の収支はどうなるでしょうか。
物件A:年50万の家賃、売却益−100万円
→総合収益+150万円物件B:年150万円の家賃、売却益−750万円
→総合収益±0円
で、利回り5%の物件Aの総合収益がBを上回りました。
これが、地方における人口減少のリスクプレミアムです。
利回りが良い、キャッシュフローが良いからといって、価格下落を織り込んでいる不動産投資は最終的な売却益が決定しない限り、投資が成功かどうか判断できないわけです。
これを「なんとなくの予想」で売買価格に乗せているのが地方不動産価格であり、それが反映されているのが、相対的に高く見える「利回り」です。
Twitterにて、以下のように述べました。
結局都心6%物件も、地方20%物件も、トータル利益が同じになる場合というのは、ある。最後の売却額次第。
それを理解すると、地方高利回りにそれほど強いこだわりを持たなくなる。
— Dr.ラス (@3n4rs) July 1, 2020
あまり利回りだけ追い求めて地方物件を買うのも、どうなのだろうかと最近思っています。
地方不動産投資の本当のリスク
さて、上記では総合収益を都心物件が上回りました。
しかしながら、これだけでは都心物件が有利かどうかは判定できません。
なぜか?
地方物件は、一時的にキャッシュリッチになっているからです。
例えば1年目、地方物件は150万円入ってくるのに対して、都心物件は50万円しか入ってきません。年100万円の差額が生じています。
仮にこのお金を、年10%の利率で運用できたとします。
そうすると1年後には100万円、2年後には210万円、3年後には331万円、4年後には461万円、5年後には607万円の差が生まれます。
地方物件Bは売却益で−750万円、都心物件Aは売却益が−100万円で、650万円の差がありますが、これでほぼこの差を埋める事ができます。
つまり、地方不動産投資は
- 一時的にリッチになったキャッシュを、いかに効率よく運用できるか
がカギです。
地方不動産投資の真のリスクは、既に価格に織り込まれている「人口減少」ではありません。
真のリスクとは
- 一時的にリッチになったキャッシュをいかに効率よく運用するかが大事である、という事を気づかない事
です。
手元の現金を、わけもわからずただ持ち続ける事です。
もしくは無駄な経費にばかりお金を使ってしまい、再投資になっていない事です。
この事に気がついていない地方不動産投資家が、多いように思われます。
Twitterでこのように述べました。
地方中古1棟フルローンは、キャッシュリッチになるが実はかなりプレッシャー。
自己資本比率がグッと下がりROIがかなり高まるが、投資総合成績は手元のこのキャッシュを「どれくらい有効活用できるか」に依存してて、少なくとも寝かせておくわけには行かないから。
— Dr.ラス (@3n4rs) July 1, 2020
これを意識できるかどうか、今後非常に重要になるはずです。
Twitterでこのようにも述べました。
修正内部収益率(MIRR)で考えると、トータルの利益が同じでも、時間的に早く資金回収をした方が、その資金を再投資できることから有利(MIRRが高い)。
つまり、トータルの利益が同じなら、高利回りでキャッシュフローが良好な方が、良いという事。
ボロ戸建てはMIRRを意図的に高めれば、有利。
— Dr.ラス (@3n4rs) July 1, 2020
もう少し内容的に踏み込むと、トータル利益が同じなら資金回収が早い方が有利、という結論に達します。
地方不動産投資のリスクをヘッジする方法
地方不動産投資における、真のリスクは「一時的にリッチな手元のキャッシュを、高い利回りで運用しなければならない」という事だと述べました。
このリスクをヘッジする方法は簡単です。高い利回りで運用すれば良い…というのは冗談です。
実際、それは難しいですよね。

ではどうするべきか?簡単です。
- 入ってきた手元のキャッシュを頭金に次の物件を買う
- 既存物件を高く売れる時に売る
の2つです。
既存物件から得られたキャッシュフローを頭金や諸経費にして、次の物件を買います。
さらにその物件から、新たなキャッシュが毎月もたらされます。
そのキャッシュを使って、さらに次の物件を買っていきます。
またキャッシュが…という事を繰り返すと、地方不動産投資では一気に規模が拡大でき、キャッシュリッチになる事ができます。
しかしこれは、上記で述べたように幻です。売却時に大損する可能性があるからです。
そこで、既存物件が高く売れそうなら、高く売ってしまうという方法があります。

入ってきた一時的なキャッシュを得つつ、最後の売却損の「ババ」は別の投資家に引いてもらう。
これが地方不動産投資家が勝つ、確かな方法だと言えるでしょう。
そのためにできる事としては
- 少額の物件を買う
- 地方でも人口減少が軽微な地域の物件を買う
事です。
僕は1棟目が2000万円、2棟目が3300万円と、こぶりな地方物件を購入しています。
いずれも大型ショッピングモールの近くで、人口が増え地価が上がっている地域です。
であれば地方物件とはいえ売却損リスクが限定的であり、トータル収益にそれほど影響しません。
もちろん、ある程度利益を吸収して、高く売れそうなタイミングがやってきたら、売却は視野に入れております。

そして、最近考えているのは、徐々に都心部の物件へと手を出そうという事です。
都心物件は基本的に売却損を考えなくて良いので、ある意味ラクです。
収支が合って回りさえすれば良いので、地方不動産投資よりもプレッシャーが少ないと言えるでしょう。
資産性の高い不動産は、後世に渡すバトンとしても優秀です。
最終的に都心の不動産へ資産をシフトさせるのは、必然にして必要なのかもしれませんね。