この前不動産屋さんと飲みながら話をしていました。
そこで
なぜ医師のような賢いはずの人が不動産投資でやたらと失敗するのか?
という話になりました。




おそらく一般的に考えて、医師という職業に就いている人達は、普通の人と比べると頭が良いはずの人達です。少なくとも、学生時代に勉強はできたはず。
その「勉強」には、計算を正確に行う能力だったり、文章の落とし穴を見つける能力だったりして、決して不動産投資をするにあたって不利に働くものではないでしょう。
そんな能力を持っているはずの医師が、なぜ不動産投資では失敗してしまうのでしょうか。
不動産投資で失敗する医師に共通している事
色々話を聞いてみると、不動産投資で失敗する医師の、失敗する原因はたった1つでした。
それは資金のショート、つまり資金繰りの失敗です。
会社を経営していても黒字倒産という言葉があるように、キャッシュフローがまわらなくなると会社はつぶれます。
不動産投資は投資ではなく事業です。
利子付きで銀行からお金を借りて、安くリフォームしたり独自の価値をつけたりし、集客しキャッシュを得るという、1つの事業です。
ですから不動産投資家は、会社が倒産する可能性があるように、破産する可能性も当然あります。
会社が倒産するパターンはいくつかありますが、その中でも「資金のショート」が医師兼不動産投資家が失敗する、破産するパターンとしては多いようです。
不動産投資家が資金をショートさせてしまうには、2パターンがあると思います。
- キャッシュフローに対する意識が希薄
- 意識していたが資金がショートしてしまった
の2パターンです。
1つ目は「キャッシュフローを意識する事が大事である、不動産投資は会社経営と同じである」という考え方がそもそも頭の中に無いパターン。
目先の利回りや収益性、路線価と再調達価格の資産性を重視するあまり、キャッシュフロー経営の考え方が無い経営者(=不動産投資家)は、今は良くても市況が悪くなったり何かトラブルに巻き込まれた時にキャッシュが枯渇しかねません。
結果的に銀行への返済が滞り、銀行から一括売却を迫られる、と。
2つ目、意識をしていても想定の範囲外の事が起きて、資金がショートしてしまったパターン。
例えば持っている物件が近くの工場労働者に100%依存していて、工場が閉鎖し一斉退去。いきなり家賃が入らなくなり借入金の返済が滞る、とかですね。
このようにキャッシュフローが枯渇する理由は大きく分けて2つ存在すると思いますが、なぜ医師のような職業に就いていながら、キャッシュが枯渇してしまうのでしょうか。
医師が不動産投資でキャッシュフローが枯渇し失敗してしまう3つの理由
医師が不動産投資で失敗する大きな原因は、キャッシュフローの枯渇であると述べました。
さらにキャッシュフローの枯渇は大きく分けて2つのパターンがある、とも言いました。
ではなぜ医師は、不動産投資でキャッシュを枯渇させてしまいやすいのでしょうか。

それは
- 医師は高収入であり税金が高く「節税」という言葉に弱いから
- 医師としての本業が忙しく、時間をかけずにラクに儲けようとするから
- 医師という高属性のため借入金が莫大だから
の3つです。
1、医師は高収入であり税金が高く「節税」という言葉に弱いから
医師であれば1回くらいは、不動産屋からの勧誘電話を受けた事があると思います。大学の名簿でも流れているのでしょうか。
多くの場合、都市圏の区分マンションである事が多いように思えます。素人をカモるにはちょうど良いんでしょうね、
そういう勧誘、セミナーでの謳い文句に魅力を感じてしまい、不動産投資の目的が「節税」になってしまった医師は、キャッシュを枯渇させやすいと言えます。
目的が節税なので、不動産投資を事業として見る目が損なわれているからです。
これは先ほどのパターン1に当たります。
この場合はキャッシュフローを元から意識していなかった事が原因なので、起こるべくして起こった失敗です。
キャッシュフローをシミュレーションする事は、非常に重要です。
2、医師としての本業が忙しく、時間をかけずにラクに儲けようとするから
医師という仕事はどうしても忙しいので、不動産投資に投入する時間が少ないはずです。
物件を探したり交渉したり、購入した物件を時間をかけて手直ししたり、物件資料を作って仲介業者に営業したり、不動産投資事業を成功させるために投入するべきリソースが、どうしても少なくなってしまいます。
一言で言えばラクして儲けようとするわけです。
そういう気持ちでいると、「"ラクして儲けたい” と思っている人をカモる業者」に食われます。
怪しげなサブリース、一括借り上げ、家賃保証などの条件で物件を購入。2年経ってサブリースや家賃保証を解約され、急激に資金繰りが悪化し資金がショート、とか。
これは医師に限った話ではなく、忙しいサラリーマン不動産投資家にも同じ事が言えるでしょう。
ラクな金儲けというものは存在しません。
ほぼ100%地道努力の積み重ねが必要です。
たっぷり勉強して、いっぱい資料を見て内見して、やっとの思いで買い付けをいれて、それでもタッチの差で買い付け速度が相手の方が早くて…。
僕も何回もこれを繰り返しています。
そういう大量の時間を投入してこそ、順調なスタートを切る事ができるはず。
不動産業界に古くから伝わる「千三つ」にもあるように、1000個の物件を見て買って良いのは3つだけ、というくらい時間をかけてじっくり探す必要があると思います。
3、医師という高属性のため借入金が莫大だから
これは医師あるあるです。
医師は社会的な属性が良いので、銀行からの評価が高い。銀行からの評価が高い分、安い金利で長く、大量の資金を銀行から借り入れする事ができます。
もちろん将来的にどうなるかはわかりませんけどね。
で、当たり前なのですが金利が安く、借入金が大量にある場合、利益があげやすいわけです。
以下の例を見てみましょう。
<医師A>
借入金=3億円
金利と返済金=借入金の3%/年<サラリーマンB>
借入金=5000万
金利と返済金=借入金の3%/年
これらを同じ運用利率、9%で運用したとしましょう。
医師Aは
3億円の借金で9%で運用、利益=2700万
3%を返済するのでー900万、手元には1800万
サラリーマンBは
5000万を9%で運用、利益=450万
3%を返済するのでー150万、手元には300万
となります。
サラリーマンB=+300万
医師A=+1800万
全然違いますね。
医師の場合は大量の資金を借り入れることができるため、容易にバランスシートが膨らみます。きちんと運用すれば高い利益を上げることももちろんできます。

例えば、物件に緊急トラブルが発生し、物件価格の10%を緊急補填する必要が出てきてしまったとします。そして年間運用利率が5%に低下しました。
医師Aは、3億円の10%の緊急補填で3000万を吐き出し、5%で運用し1500万の利益です。銀行への返済が900万あるので、トータル2400万のマイナスです。
これでは、医師でも補填するのが難しいケースもあるはずです。
一方サラリーマンBは、5000万の10%なので500万を吐き出し、5%で運用250万の利益です。銀行への返済が150万あるので、トータル400万のマイナスです。
医師A=ー2400万
サラリーマンB=ー400万
2400万を手元にキャッシュで持っている医師は少ないと思います。まさに資金がショート、銀行への返済が滞り破産するパターンです。
サラリーマンBは手元に400万くらい、あるのではないでしょうか。また400万くらいなら、親族などからかき集めれば何とかならなくもない額です。
このように、医師は高属性ゆえに借入金が莫大で、何かトラブルが起こった時の動く額が大きいわけです。

これも医師がキャッシュフローをショートさせてしまいやすい原因の1つです。
そうならないために、無理に借入金をつかってバランスシートを拡大させず、ある程度の純資産倍率を保つのも1つの手です。
保守的ですが防御力の高い堅実な資産戦略です。
不動産投資で「医師の高属性」は失敗の元にもなる
このようなツイートをしました。
RC築35年利回り12%、積算の120%くらいの値段で物件買ってる医師がいました。
医師だとこういう物件買えちゃうんですけど、絶対買っちゃダメです。絶対。
売れませんよこんなの。
— ラス@お金の外来 (@3n4rs) 2019年5月16日
つまり、医師は
- 高属性がゆえに普通なら買えないような物件も買えてしまう
んです。
だからこそ変な物件を掴むリスクが、他の人よりも高いわけです。

という理由で買うのはやめましょう。
キチンと理論立てて、投資内容的に見合う物件を購入するのが大事です。