昨今、軍用地を使った相続税対策が流行しているようです。
不動産を活用した具体的な医師の相続税対策にも書いたように、一時期高級マンションの最上階を使った相続税対策は流行しました。
しかしそこに法のメスが入ると、今度は軍用地へと人が流れました。
軍用地とは
軍用地とは、米軍が利用している日本の土地の事。
軍用地の所有者は、米国および日本政府から一定の借地料を受け取る事ができます。
一般的には土地価格の4〜5%前後で推移していたようですが、現在は軍用地人気の過熱もあって2%前後になってしまうくらい、需要が供給を上回り価格が高騰しています。
軍用地で相続税対策ができる理由
軍用地で相続税対策ができる理由は
- 相続時の「土地の評価額」と、実際に売買される「市場価格」が大きく異なるから
です。
以下のような土地を相続したとします。
固定資産税評価額=1000万円
年間借地料=100万円
今の市況であれば、年間借地料は市場価格の2%程度ですから、この土地を売るとすれば
100万円/0.02=5000万円
で売る事ができます。
国の「土地の評価額」である固定資産税評価額は1000万円なので、相続税としては1000万円分しかかかりません。
しかしながら実際は売却すれば5000万円の利益が出ます。
これは
資産は4000万円分圧縮された
と考えるべきで、割合としては
資産が5分の1に圧縮された
と考えて良いでしょう。
このように、相続税を算定する上で参考になる「固定資産税評価額」と、実際に売買される「市場価格」に大きな乖離があるため、その差額分だけ資産が圧縮される、これが相続税対策の根源となるスキームです。
なぜ軍用地は相続税対策に使われやすいのか?
なぜ軍用地だけこのような現象が起きているのでしょうか。
理由は
- 不動産だから
- 立地が沖縄のど田舎だから
- 低金利の時代だから
という3つの理由があります。
不動産は相続税対策に使われやすい
そもそも、不動産という商品はこのような「価格の乖離」が起こりやすい商品です。
なぜならば流動性が低いからです。
例えば株式の場合、1株1000円の株が明日には900円、という事も多いに起こり得ます。
いわゆる時価というものですが、1日1日と価格が改定され、その価格で買う事ができて、その価格で売る事ができます。
一方で不動産の場合、市場価格が大きく変動したとしても、参考となる「固定資産税評価額」を算定する「路線価」という、国税庁が決めている土地の値段はそれほど大きく動きません。
動くとしても、年単位で時間がかかるため、市場価格との乖離が生じやすいのです。

田舎の土地は固定資産税評価が低い
もう1つは、沖縄の田舎という立地が原因です。
沖縄の田舎の土地は、語弊を恐れずに言えば資産としての価値は非常に低いわけです(少なくとも現段階では)。
しかしそこに借地料というキャッシュフローが存在し、それによって市場価格が釣り上げられたとすると、価格の乖離が大きくなります。
田舎であればあるほど固定資産税評価が低く、実勢価格のとの乖離が大きくなりやすいと言えます。
低金利の時代は軍用地が人気になる
軍用地の借地料が欲しいという状況は、どちらの状況に起こり得るでしょうか。
- 銀行の定期預金が5%の時代
- 銀行の定期預金が0.05%の時代
明らかに後者ですよね。
利息が5%つく時代ならば、軍用地の2%は美味しくありませんが、今の低金利の時代では軍用地の借地料は美味しいわけです。
低金利という時代も、軍用地人気を確実に後押ししていると言えます。
軍用地でいくら相続税対策ができるのか
先ほどの例であったように、20%くらいに資産が圧縮される例が結構あります。
例えば10億円資産があっても、相続時の資産評価としては2億円になります。
ザッと計算すると、10億円資産があって子供が2人いる場合、相続税は1億8000万円です。
2億円に圧縮されれば、1400万くらいで済みます。

軍用地の未来はどうなるか
今の状況がずっと続くとは、僕は思えません。
僕が政府の人間ならば、借地料を下げます。
そうすれば市場価格も下がって、固定資産税評価額との乖離が少なくなり、相続税対策としての旨味が減ります。
しかしながら、おそらくそれは難しいと思います。
- 沖縄
- 戦争
- 米軍
というセンシティブな内容であって、政治活動家も絡む内容です。政府も下手に彼らを刺激したくないでしょう。
とすれば、沖縄全体の土地の固定資産税評価額を上げるしかありませんが、これは沖縄県民の支払う税金も増えるという事になります。
土地の価格が上がっているので、損はしないのですが、一時的に沖縄県民のキャッシュフローが悪くなる事が想定できます。
その辺りをどうバランスして動くのか、今後は見ものですね。
また金利が上がり始めた場合も、軍用地人気は一気に冷え込むでしょう。
現状、上記のようなリスクに対して、2%というベネフィットは安いと思います。
つまり投資妙味といては、もう既に無い。時既に遅し。
あくまで短期的な相続税対策として使う分には、現状まだまだ有用そうです。