医師免許があれば食いっぱぐれない、という幻想

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医学生時代、家庭教師をしていると生徒の親から

医師免許があれば食いっぱぐれないから、良いですよね

とたまに言われました。

医師になってからも、合コンで

医師免許あれば食いっぱぐれないよねーいいなー

とか言われます。

世間一般に、まことしやかに囁かれる命題「医師免許を保有しているならば、食いっぱぐれる事は無い」は、果たして真なのでしょうか?

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医師免許があれば食いっぱぐれない?

結論から言ってしまえば、医師免許があれば食いっぱぐれない、これは幻想です

なぜならば医師免許の価値には、特性があるからです。

  1. 医師免許はインフレに弱い
  2. 医師免許は円安に弱い
  3. 医師免許の効果は国の財政に依存する

という、3つの特性を持っています。

 

1、医師免許はインフレに弱い

医師免許の大きな特徴の1つは、インフレに対して弱い事です。

景気が良い時、サラリーマンの場合は給料が増えます。会社が儲かり、人材の引き抜き合戦が始まりますから。

一方で医師の場合、景気が良くても患者が増えるわけではありませんので、給料は変わらないでしょう(美容外科などの自由診療を除く)。

景気が良い時、つまりインフレが起こった際には、医師の場合は給与が増えないにも関わらず物価が上昇するため、不利です。

医師免許はインフレに弱い資格資産だと言えます

一方で、デフレに強いとも言えます。

景気が悪くなると、普通のサラリーマンは給料が下がります。もしくは会社が倒産して失業してしまったり、リストラされてしまう可能性もあります。

一方で景気が悪くても、医師のもらう給料は変わりません。

景気が悪くても、病院の収益は変わらないからです。景気に無関係に、病気になる人や怪我をする人は必ずいます。

 

2、医師免許は円安に弱い

医師免許を換金でして得られる貨幣は、日本円です。

仮に一生を通じて、医師免許を使った労働から得られる日本円が6億円だとします。この時の為替レートは1ドル=100円だとします。

1ドル=120円の円安になったと想定すると、ドルベースで600万ドルだった6億円は500万ドルに目減りします。6分の1減少です。

中には海外で働いて外国通貨ベースで給料をもらう人もいるでしょうから、一概には言えません。

しかし多くの医師は労働力を全て日本円に換金します。

将来的に得られる日本円は、円安に弱いので、医師免許の価値も円安によって目減りします

 

3、医師免許は国の財政に依存する

日本の医師免許の換金性は、日本国の財政に依存します

なぜならば、日本は国民皆保険制度が採用されているからです。

医師の給料の源泉は、国の支払う「医療費」です。

医療費のうち7〜9割を国が支払い、1〜3割を国民が支払っています。生活保護者に対する医療費は、10割を国が負担しています。

医師の給料の源泉である「医療費」の大半を支払っているのは国であり、厳密にいえば国の財源のうち「社会保障費」に含まれています。

つまり医師の給料は、国の歳出のうちに占める「社会保障費の中の医療費」です。

医師免許の価値、つまり医師免許を使った労働力の換金性は、国の財政状況に依存していると言っても過言ではありません。

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医師免許があれば食いっぱぐれない、という幻想

この3つの特性は、医師免許の価値を大きく左右させます。

いくら医師免許を持っていても、時代や経済情勢から、うまく立ち回る事ができなくなれば、いくら医師とはいえ「食いっぱぐれる」事になるでしょう

具体的に計算してみましょう

インフレリスク、為替リスク、国の財政リスクをヘッジした上で「医師免許を通じて得られる生涯給料」は7億円だと仮定。

  1. 物価が1.5倍
  2. ドルベースで5/6の円安
  3. 国の財政が悪化し生涯給料1億円減少

この3つが同時に起こった場合、本来手元にあったはずの7億円

6億円×2/3(物価上昇に対する相対的価値の目減り)×5/6(為替変動)
3億3333万円

となり、ドルベースで物価に対して半分の価値もありません。

最初に想定していた資産に比べて、実質的には半分しか富が蓄積しない事になります。

想定より少ない資産に対して出費が多ければ、医師免許があっても「食いっぱぐれる」事になるでしょう

 

医師免許があっても食いっぱぐれないために

これらの3つのリスクをモロに受けないためには

  • インフレリスクをヘッジする
  • 為替リスクをヘッジする
  • 国の財政に依存しない収入源を確保する

事を行う必要があります。

インフレのヘッジ、これは基本的には物価の上昇とともに上昇する資産を持てば良いだけです。パッと思いつくのは

  • 株式
  • 不動産
  • 会社組織

あたりでしょうか。

この真逆に位置している資産が現金や定期預金ですね

為替リスクのヘッジも難しくなくて

  • 外国通貨
  • 外国債券
  • 外国株式
  • 外国不動産

を持てば可能です。

通貨に関しては、外貨預金などは手数料がムダに高くてオススメできません。

国の財政に依存しない収入源を持つ、これはつまり

  • 自由診療による収入
  • 医師免許以外の収入

を示しています。

とはいえ、この全てを今すぐ実行するのは難しいと思います。

先日このようなツイートをしました。

僕が伝えたいのは

  • 多くの日本の勤務医は何も考えずに、かなり偏った賭けをしている

という事です。

そしてそれに対する、警鐘です。

医師免許があれば、とりあえず食いっぱぐれない〜

とあぐらをかいて、適当にお金を使っていると、将来後悔をする事になるでしょう。

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