それなりに医師として働いていると、いわゆる名医と出会う事があります。
- 手術がとんでもなく、上手で、速い。
- 瞬時の判断が的確で、速く、周りがよく見えている。
- 気難しい患者さんから信頼を得て、治療まで達成させる確率が、圧倒的に高い。
タイプは様々ですが、同じ医師として「あの人みたいにはなれないな」と思い知らされます。
僕が他の医師を「名医」なんて決めつけるのは、おこがましい事ではあります。それでも彼らに対する賞賛とリスペクトは、医師免許を持つ人間ならば自然と滲み出てしまう物ではないでしょうか。
そんな名医を見て思う事があるのは
- 彼らは決してお金持ちではない
という事です。
医師として社会に与えている好影響度に比して、得ている報酬が少ない。
一体なぜこんな事が起こるのでしょうか。
名医になるには、医師の業務が「好き」でなければならない
このようなツイートをしました。
欲望の強さは行動を促し、行動の蓄積は結果を生む。
どれくらいの強さの欲望を、どれくらいの時間持ち続けたか。物理で言う「力積」に近い概念が、今の自分の状況を作っていると思います。
— Dr.ラス (@3n4rs) February 25, 2021
好きこそ物の上手なれ
という、ことわざがあります。
何事によらず、好きであれば自然にそれに熱中するので、上達する、という意味です。
嫌だと思いながら努力している人間は、好きで熱中している人間には、勝てないという意味にも使われます。
全ての人間に、これは当てはまると思います。
手術が好きで熱中できるから、手術は上達する。
患者さんと話すのが好きだから、患者さんとの話術が上達する。
名医になるためには、医師としての自分の業務を、根本的に好きである必要があると言えるでしょう。
もちろん、好きというだけではダメです。
持って生まれた才能という、結果とは切り離せない要素も存在するはず。
しかしながら「好き」である事は、上達の必要条件ではあるはずです。
お金持ちは、お金を稼ぐ行為そのものが「好き」
お金を稼ぐ、という事についても同様なのだと思います。
お金稼ぎが好きだから、お金稼ぎが上達する。
お金稼ぎが上達するから、お金持ちになる。
嗜好性が能動的な努力を促し、能動的な努力が結果を生み出す。
この論理が、おそらく「お金を稼ぐ」という事にも、通じます。
僕はまだそれほどお金を稼げているわけではありませんが、それでもお金を稼ぐ事は好きで、実際に稼いでみて、少しずつ上記内容を感じ始めています。
名医がお金持ちになれない理由
名医になるには、名医になるための努力を「好き」である必要がある。
お金持ちになるには、お金持ちになるための努力を「好き」である必要がある。
お金持ちの名医になるには、名医になるための努力が「好き」で、時間と労力をかけつつも、お金持ちになるための努力が「好き」で、時間と労力をこちらにも同等に割り振る必要がある。
仮に1日12時間、修行に身を置いたとします。
名医としての修行に12時間、お金持ちになるための修行に12時間を割り振る必要があります。
無理ですね。
とは言っても、名医としての修行に6時間、お金持ちになるための修行に6時間を割り振っていたら、どっちつかずになってしまうでしょう。
名医になるためには、お金持ちになるための時間や労力は、捨てなければなりません。
名医になりつつ、狙ってお金持ちになるのは、難しいと言えます。
名医がお金持ちになるには「結果的にお金持ち」になる必要がある
名医がお金持ちになる、という事は不可能なのでしょうか?
答えはノー。
名医になれば、即ち経済的にも成功する、という「環境」があればオッケーです。
例えばアメリカ。
アメリカでは、専門性の高い医師の給料は、そうでない医師に比べて数倍高いです。
これを可能にしているのは、アメリカの医療経済が「専門性の高い医師の治療費」をめちゃくちゃ高く設定できる構造になっているからです。
希少性の高い人材が、その人しかできない仕事で、仕事によって発生するフィーが高ければ、当然のように給料に反映できます。
例えば美容整形。
美容整形は、医師の腕が良く評判が立てば、患者が殺到します。
忙しくはなりますが、年収1億を稼ぐ美容外科医は、フツーにいます。
いずれにも共通しているのは、名医が仕事をする事によって「発生するフィーが高い」という条件です。
名医でありながらお金持ちになるためには
- 顧客から、大量のフィーを取る事ができる
という「環境」が、必須です。
名医が「狙って」お金持ちになるのは無理ですが、環境さえ整えば、名医が「結果的に」お金持ちになる事はできます。
日本では「お金持ちの名医」は、存在し得ないのか?
日本では現状、名医だろうが研修医だろうが、顧客(患者)から得る診察料は変わりません。
国民皆保険制度によって、診察料は国が一律で価格を決めているからです。
この環境では、日本では「お金持ちの名医」は存在し得ないでしょう(美容整形など自由診療領域を除く)。
しかしもし、国民皆保険制度にテコ入れをし、専門医や名医の診察料を高くし、ペーぺーの医師や非専門医の診察料を安くすれば、話は別です。
希少性の高い人材が、その人しかできない仕事で、仕事によって発生するフィーが高ければ、当然のように給料に反映できます。
今まで均一だった「仕事によって発生するフィー」が、医師としての熟練度や専門性に応じて上昇するのならば、日本の保険診療でも「お金持ちの名医」が存在し得るでしょう。
実際にその上昇幅は、フィーの上昇幅に依存するので、それほど大きな差にはならないかもしれませんけどね。