若手医師のモチベーションが「お金」にシフトする理由

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最近、若手医師、特に研修医などと接していると、結構「お金」がモチベーションになっている若手医師が、多いように感じます。

多いように感じる、というのは、あくまで現状の上の先生達と比較して、対人口比でお金をモチベーションにしている人の割合が、肌感覚的に多いという意味です。

仮に「若手医師のモチベーションがお金になりつつある」という命題が真だとして、その原因は一体何なのでしょうか。

 

モチベーションに対する実験

モチベーションに関する本の中で、とある実験結果について記載されています。

その実験は、猿にとって難解なパズルのようなものを解かせて、少し放置しておいたところ、特別報酬は無いにも関わらず、猿達はパズルを時続けた、という結果から生まれました。

少し手を加えて、パズルが解けた際に報酬を与えた群と、与えなかった群を作り出すと、たちまち猿達のパズルの正答率は、報酬を与えた群で低下したそうです。

報酬が、仇となったという事ですね。

この結果から、生理的欲求(衣食住、性欲)が満たされている場合、次のモチベーションを産むのは内発的動機(そのものの楽しさ)であるとしたわけです。

人間界でも、近い事があるかもしれません。

医学部に入るような高学歴な集団では「勉強しろと親に言われたことが無い」とよく言われます。僕もありませんでした。

生理的欲求が満たされた上で、勉強に対する「内発的動機付け」が成功し、モチベーションが高く維持された結果、努力と継続を産み、結果を出している可能性は、あるのかもしれませんね。

エサで釣っているうちはモチベーションは高く維持されません。

ここで重要になるのは、生理的欲求が満たされる、という事が最低条件になるという事です。

 

医師のモチベーションの最下層、「生理的欲求」を満たす構造

医師も人間ですから、生理的欲求が満たされる必要は、当然のごとくあります。

生理的欲求とは

  • 食べる
  • 寝る
  • 家がある
  • 服がある
  • 健康である
  • セックスをする
  • 子供を産む
  • 子供を育てる

という、生物としての根源的な、最下層のモチベーションです。

これらのモチベーションを満たすために必要なのは、最低限のお金です。

この生理的欲求を満たすために必要な「お金」を、医師が稼ぐための構造が、時代の流れによって変化したと僕は思っています。

 

医師のモチベーションが「やりがい」で通用していたメカニズム

昔は、医師がお金を稼ぐ方法として

  • 偉くなる
  • 製薬企業とかからゴニョゴニョ

という流れが、あったと聞いています。

若い頃稼げなくても、偉くなってから稼いで辻褄を合わせる。

時間的シフト。

医師としての労働力ではなく、影響力を「講演会」や「研究費」などに換金する。

収入のアウトソース。

この2つの方法が、昔はあった。

だから、若手医師には

医師のモチベーションは「やりがい」だ
患者さんから学ばせてもらうんだ

と言い聞かせていたわけです。

「今頑張れば将来、君の生理的欲求を満たすためのお金を得るためのチケットが手に入るぞ」と。

まあいわゆる「やりがい搾取」的な方法ではあったと思いますが、実際に最後は経済合理性の辻褄が合うように、できていたのだと思います。

しかし、この2つの方法が効かなくなった現代では、若手医師のモチベーションは変化します。

 

若手医師のモチベーションが「お金」にシフトしている理由

偉くなってから稼ぐ。エラさと影響力で、労働力以外の方法で稼ぐ。

この方法ができなくなったので、若手医師は若い頃からお金を稼がなければ、トータルで生理的欲求を満たせないようになります。

将来の経済が確約されていない不安から、自分が予想するよりも多めの金額を、得ようとするはずです。人間はマイナス面に対して過剰に反応する生き物ですから。

具体的には、医師としての労働力を売るしかありません。

若手医師は「若い頃から、高単価で労働力を売る」という答えに辿り着くはずです。

加えて、現代は格差社会。

中間層はおらず、「富める者」と「困窮する者」の2つに分かれた社会だと言われています。

医師のような高単価の労働力を有する労働者でさえ、労働者でありながら「子を産み育てる生理的欲求を満たせるほど稼ぐ」のは、一筋縄ではいかない世の中になりました。

さらに言えば、インターネットとSNSの発達により、今まで見えない世界が見えるようになりました。

同級生や友人の経済状況も見え隠れするわけです。

より「もっとお金を稼いで、明確に勝ちたい」という欲求が、強くなります。

経済合理性の時間的シフトという「日本の終身雇用的なモデル」の崩壊、資本主義が進行した事による格差、インターネットとSNSによる透明化。

この3つの波が、若手医師のモチベーションを「お金」にシフトさせている、と僕は思っています。

 

若手医師が「お金」をモチベーションにする事の罠

お金をモチベーションにする、という事は、実は危険かもしれません。

冒頭で述べたように、内発的動機付けを失う可能性があるからです。

楽しかったはずの仕事が、お金をモチベーションにした途端に、つまらなくなってしまう。

楽しかったはずの仕事が、苦痛になってしまった。

これをここでは「モチベーションの罠」としましょう。

「お金」をモチベーションにする事で生まれる、「モチベーションの罠」にはまらないためには、どうしたら良いのでしょうか。

僕は、2通りあると思っています。

1つめは、分ける。

好きでやっている仕事では、お金を稼がない。内発的動機付けを維持しながら、楽しむ。

代わりに、別の事でお金を稼ぐ。しかしそちらに時間を取られ過ぎると、結局「モチベーションの罠」にはまってしまうので、時間をかけてはいけません、労力もかけてはいけません。つまり自動でお金だけ入ってくるような仕組みが必要で、僕はインターネット上の広告と、不動産を選びました。

実際、これらはほとんど何もせずに毎月お金を僕の懐に入れてくれます。

2つめは、結果的にお金を稼ぐ。

あくまでお金を目的に仕事をするのではなく、楽しい仕事をして、気がついたらお金が入ってくる、というような状況に身を置く。

一言で言うと「稼げてハマれる事をやれ」という事になります。

例えば、マイクロ手術が好きならば、保険診療の外科系を選ぶのではなく、自由診療の美容外科系を選ぶ、という具合です。

僕は1つめの方法を実施するべく、不動産を触り始めて、やり始めると内発的動機付け(そのものの楽しさ)が出てきてしまったので、2つめの性質に近づいています。いずれにせよ、僕のモチベーションは高く維持されており、不動産について動き回っている時はとても楽しい時間を過ごす事ができています。

一方で、医師としての労働力を「お金を稼ぐための道具」として考えてしまった僕は、まさにモチベーションの罠にハマりこんでしまい、イマイチ楽しむ事ができなくなってしまいました。

代わりに「生理的欲求を満たすためのお金」は手に入りそうですので、まだマシではあります。

僕の次の課題は、何を楽しくやるか(内発的動機付け)です。

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