最近、老健施設における医師の寝当直バイト代が下がっています。
少し前までは1泊5万円、休日24時間で10万円くらいでした。
今や1泊4万円、安いと3万円代の案件も出て来ています。
「寝当直の森」というサイトによれば、3万円代の案件が28%を占めているようです。
きっとこの値段でも、やる人はやるという事でしょう。
値段の下落率的には、5万円がー2万円であれば、ー40%の下落率です。

では一体なぜ、老健施設における医師の寝当直バイト代は下がっているのでしょうか。
老健施設での寝当直、医師のバイト代が急低下している理由
理由は大きく分けて2つあります。
- 医師のバイト代に市場原理が働くようになった
- 老健施設での寝当直に参戦する医師が増えた
の2つです。
医師のバイト代に市場原理が働くようになった
まず1つには、医局制度の崩壊とインターネットの発達が原因で、医師のバイト代に市場原理が働くようになりました。
昔は医局が病院のバイトは一通り牛耳っていて、それをニンジンにして医局員を操っていたわけです。
医局員からしても、生活する上で必要なお金の源泉である「バイト」を人質に取られては、言う事を聞く他ありません。
しかし医局制度が崩壊し、医局員が減りバイトが医局内でまわせなくなると、そのバイト案件が市場に出回ります。
さらに地域医療が崩壊し始めると、今度は病院が独自で医師を集め始めます。
同時にバイト案件もポコポコと生まれると。
そこに拍車をかけるようにインターネットが急激に普及し、いつでも誰でもどこでもバイト案件を医師が閲覧できるようになりました。
医師のバイト案件が市場に出回り、それがインターネットによって誰もがフラットに閲覧できるようになった事で、急激に「医師のバイト代」に市場原理が働く土壌が整います。
こうすると、あとは需給バランスで値段が決まります。
医師ならば誰にでもできる内容で、供給が増えれば値段は下がります。
特定の医師にしかできない内容で、供給は増えず需要が高まれば、値段は上がります。

老健施設での寝当直に参戦する医師が増えた
市場原理が働く土壌が整った医師のバイト業界ですが、近年ではその需給バランスが崩れ始めています。
つまり需要に対して供給が増えています。需要ー供給曲線における「均衡価格」が下落しています。
経済的な自由を求めて、お医者さんが頑張ってバイトを探して働けば働くほど、バイト代が下がって経済的な自由から遠のくという現象が起こっていて感慨深い。
インターネットによって情報の非対称性が取り除かれた完璧に効率化された世界では、需要-供給曲線で値段が決まります。
— ラス@お金の外来 (@3n4rs) 2019年5月18日
このツイートの通り。
その中でもバイト代の下落が顕著なのが、老健施設の寝当直バイト。
つまり老健施設の寝当直バイトに参戦する医師が、増えたという事を示唆しています。
では一体なぜ、老健施設の寝当直バイトは供給が増加したのでしょうか?
後期研修医が老健施設の寝当直バイトに
まず1つは、若手の後期研修医がこぞって参戦しているからです。
今の時代、ネットで医師はバイトを探す事ができます。そして若手はそれを知っています。
一昔前であれば、後期研修医になりたての頃に行くバイトと言えば「先輩や上の先生からの斡旋」がほとんどでした。
しかし時代が変わり、ツテを頼らなくてもバイト先が見つかる時代になりました。
ネットで探すと落ちていますからね。
特に初期研修医の供給が過剰気味な都市部では、ともなって後期研修医が行えるようなバイト代の下落は顕著なように感じます。
また後期研修医は専門家としてのスキルや経験が無いので、できるバイトが限られています。
中でも寝当直バイトは、正直なところ肉体的にもかなりラクなので後期研修医に人気です。
僕が後期研修医になったばかりの頃、同期達の約50%くらいは、何かしらのバイト募集サイトからバイトに行っていました。
後期研修医が1つの大きな供給源になっているのは、間違いありません。
この辺りの原理については、医師のバイト、安い案件が増加する理由に詳しく記載しました。よければご覧ください。
女医さんが老健施設の寝当直バイトに
今後女医さんが増える事は間違いありません。
これは完全な憶測ですが、子育てと仕事を両立するべく、無理な働き方はしない女医さんも結構な数が出てくる事でしょう。
というより、既に増えているように感じます。
別に結婚していなくても「ゆるふわで働きたい」と思っている若手の女医さんも、最近は多いですね。
彼女達も、後期研修医と並んで「ラクだけどそれほどの報酬は無い」というバイトを好む傾向にあります。
子育てしながら、最前線で働いてスキルと経験を身につけ、それを生かして難易度の高いバイトをする、というのは誰にでもできる事ではありません。
僕がその女医さんの立場なら、旦那さんが休みの日に旦那さんに子供を見てもらって、その間に24時間当直バイトをして稼いでくる、というライフスタイルを考えます。
個人最適化を考えた結果、誰でもそこにたどり着きますよね。
もちろん女医さん全員がそうではないはずです。バリバリ派もいるはず。
しかしこれから女医さんが増えるにつれて、バリバリ派とゆるふわ派の割合が変わらないとすれば、ゆるふわ派の絶対数は増えます。
人生において「仕事」にウェイトを置くよりも、子育てとバランスを取って生きていきたいという女医さんの数自体は、増えるはず。
医師の寝当直バイトにおける、人材供給の大きな一翼を担うと僕は予想します。
まとめ
老健施設での寝当直、医師のバイト代が急低下している理由は
- 医局が崩壊しインターネットが出現した事で、医師人材に市場原理が働くようになった
- 老健施設での寝当直に参戦する医師が増えた
のが理由。
老健施設での寝当直に参戦する医師で、最近増えているように感じるのは
- 初期研修あがりの後期研修医
- 子育てメインの女医さん、ゆるふわ独身女医さん
あたり。
これにより供給過剰が発生し、均衡価格が下落している事が理由だと推測される。