不動産投資の世界で、指値をして値切る事はよく行われます。
指値とは「この値段なら買います」と、売り出し価格に対して指す事を言います。
基本的に値切る事と同じです。
今回はそんな、不動産投資における指値と値切りについてです。
不動産投資の鉄則、指値をして値切る
不動産投資初心者の頃は
良い物件がなかなか無いな〜
と思ってしまいますよね。僕もそうでした。
しかしながら、この考え方は愚の骨頂です。
良い物件、つまり価格に見合った物件は、無ければ創り出せば良い。
指値をして値切る事で、良い物件を創造する事ができます。
結果、購入対象となる不動産の範囲が広がります。

最悪なのは「適当な指値、適当に値切る」こと
ただし、なんでもかんでも適当に指値をして、適当に値切るのはダメです。
これは最悪です。
なぜならば、高確率で損をするからです。
仮に適当に指値をし、適当に値切ったとして、その指した値段が「売主の想定価格」より高かった場合と低かった場合を考えてみましょう。
高かった場合、買主であるこちら側は損をしますよね。売主と仲介業者は嬉しいでしょう。
低かった場合、売主はまず売ってくれません。仲介業者も

と、買主側に嫌悪感を抱くはず。
そうなってしまうと、例えばその仲介業者からは新しく物件を購入するのが難しくなってしまうかもしれません。
つまり、適当に指値をして値切ると
- 高くついた→経済的損失
- 安くなったが買えなかった→信頼損失
と、高い確率でいずれにせよ損をします。
売主の想定価格より高い値段で指してしまえば経済的に損失を出し、低い値段で指してしまえば仲介業者との信頼関係にヒビが入ります。
売主が納得できる範囲で、買主の「購入しても良い」価格の妥協点を見つける。
そういう物件をまずは見つけて、指値をして値切る事で、お互いにwin-winとなる物件を見つけましょう。

不動産投資、指値をして値切る具体的な方法
僕はザックリと
- 買っても良い価格を計算
- 売主の残債を確認
- 現地調査
- 仲の良い銀行員に打診
- アンカリングを使って指値
という手順で、指値を考えます。
1、買っても良い価格を計算
不動産にも適正価格があります。
資産性、つまり担保としての価値。積算価格というやつです。
積算価格を計算してある程度、購入金額の目星をつけます。
また、銀行から融資を受ける場合はキャッシュフローも計算しましょう。
持ち続けて出血をするだけの物件は、つまらないですから。
2、売主の残債を確認
次に、不動産仲介業者に
売主様の残債の有無、残債額を教えてください
と伝えましょう。
売主に残債がある場合、物件を売却する事で残債を完済したいはず。
物件を売って借金だけ残るなんて、嫌ですからね。
基本的に残債を返済できない金額での指値は、不可能です。
例えば残債が5000万円の物件に対して、4000万円の指値は不可能です。
まず断られますし、仲介業者からしても

と思うでしょう。
3、現地調査、瑕疵をチェックせよ
これまでの条件をクリアして、初めて現地調査です。
上記の条件をクリアしていない場合、まず購入は見送るので、現地調査は無意味です。無駄足になります。
現地調査については、具体的に僕が1棟目を購入した話を参考にどうぞ。
4、仲の良い銀行員に融資可能額を聞き出す
同時進行で、手元にある資料を元に、普段から親交のある銀行員にメールしてみましょう。

と。
できる銀行マンならすぐ返事をしてくれます。
その金額を元に指値をする作戦を、僕はよく使います。
指値をする理由として
融資が降りないからこの価格は無理です
と伝える作戦です。
極端な話ウソでも良いので「不可抗力によって値下げせざるを得ない」という意味合いを付加し、「値下げの原因が物件にあるわけではない」という印象を持たせます。
そうすれば、売主様も多少の価格交渉に対してあまり怒りません。
売主様が不動産投資のプロであればこういった小手先の印象付けは無意味ですが、そうでない売主には有効です。
5、いざ指値!大胆なアンカリングを使え
やっとここまで来ました。
これまでの手順は、労力も時間もかかるので面倒なのですが、指値をするにあたって必要不可欠な手順です。
ここまでやっておいて、指値が通らなかったり、他の人がサクッと買ってしまったりして、努力が水の泡になる事は多々あります。
それでも諦めずに、コツコツやり続けましょう。
さて、具体的な指値の話です。
(例)色々と吟味して、良さそうな物件を見つけました。
売り出し価格:3500万円
目標購入価格:2800万円
さて、いくらで指値をするのが正解でしょうか?
おわかりだとは思いますが、2800万円で指値をしてはいけません。





多分こうなります。
基本的に、目標とする金額より安く指値をしましょう。
上記の例だと2500万くらいで指値を入れれば、最終的に2800〜3000万円くらいにはなりそうです。
売主と買主、違いに値段を近づけていって最後に収束する金額が、目標価格であれば良いわけです。
この手法を、心理学的にはアンカリングと言います。
アンカリングとは、船の錨(アンカー)を下ろす事に由来する交渉術の1つで、参照基準点を作り上げる事です。
不動産売買において、不動産の売り出し価格は事前に決まっているのに対して、最終的な購入価格は未決定、交渉次第です。
未知の価格に対して、アンカリングをして
だいたいこの価格からこの価格くらい
というイメージを持たせる事で、最終的に折り合う価格を操作する技術です。
例えば3500万円の物件も、極端な話最初に1000万円で指値をすれば、最終的に2000万円くらいかな、と想像してしまいませんか?
逆に3000万円で指値をすれば、最終的には3200万円くらいになる、と感じてしまいます。
上記のように、3500万円の物件に1000万円の指値をブチ込むのは非常識なのでやめたほうが良いですが、積算やキャッシュフローから妥当な金額であれば、大胆にアンカリングをしてしまうのは有効な指値の方法です。

ドアにいきなり顔が入ってくると驚いてしまいますが「待って!一旦後ろに引いて足だけ入れるなら、良い?」と言われると、オッケーだと言ってしまいそうになりませんか。
本質的には
無理なお願いを1度して断ってもらい、もう少し難易度の低いお願いを聞き入れてもらう
テクニックです。この交渉テクニックは非常に有効です。
逆に相手から大胆なアンカリングを受けた場合は、こちらも大胆に押し返すしかありません。

「心理戦」で絶対に負けない本―敵を見抜く・引き込む・操るテクニック
不動産投資の世界、指値をして値切る事は悪ではない
指値をして値切る事、なんだか気が引けてしまうという人は多いのではないでしょうか。
確かに、日常的に暮らしていて「値切る」事があまりない我々からすると、抵抗がありますよね。
普段から商売をしている人で、慣れている人なら問題ないかもしれません。
しかしながら不動産の売買に関しては、基本的に「高く売りたい」勢力の方が多いので、遠慮はいりません。
- 売主=高く売りたい
- 業者=高く売りたい(手数料は「売却価格に対する割合」だから)
- 買主=安く買いたい
となっていますからね。
勢力としては少数派なので、圧力に負けずに交渉する必要があります。
不動産投資において、指値をする事、値切る事はフツーの事であり、決して悪い事ではありません。
