都心新築の、低利回りだけど資産性が高い物件。
地方中古の、高利回りだけど資産性が低い物件。
仮に、同じキャッシュフローが出るなら、どちらを選びますか?

という方は結構いるのではないでしょうか。
そもそも、不動産投資をキャッシュフローの観点から分析してみると、いかに
- ローン定数K%を、下げるか
- 総収益率(FCR)を、上げるか
の2つに帰結すると考えられます。
これらの差(K% − FCR)がプラス方向に乖離すればするほど、レバレッジとしてプラスのレバレッジが強く働いているという事になり、CCR(Cash on Cash Return)が上昇し、キャッシュリッチになる事を示しています。
ローン定数K%は
年間負債支払額(ADS)/ローン金額
で示され
総収益率(FCR)は
営業純利益(NOI=満室時家賃ー運営管理費ー空室)/総投資額
で示されます。
つまり
- ローン定数K%を、下げるか
- 総収益率(FCR)を、上げるか
という命題は、因数分解すると
- ADSを下げる
- ローン金額を上げる
- NOIを上げる
- 総投資額を下げる
という、要素に帰結します。
これらのうち
- ローン金額を上げる
- 総投資額を下げる
というのは
安く買って手出しをなるべくしない
という当たり前の事で、都心新築だろうが地方中古だろうが、差はありません。共通の要素です。
しかし
- ADSを下げる
- NOIを上げる
という2つの要素は、都心新築と地方中古では異なる戦略が必要になり、伴って背負うリスクも異なってきます。
都心新築の不動産、そのリスク
都心新築の不動産は、人口がある程度保たれるため、NOIは保たれ、新築であるためローン期間を長くできます。
つまり
- ADSを下げる
- NOIを上げる
のうち、NOIは保たれ、ADSは「ローン期間を長くする」事で低下させる事ができ、キャッシュフローを生み出します。
都心新築の不動産が抱えるリスクは「ローン期間の長さ」です。
つまり、ローン期間が長くなる事によって生まれる、金利上昇リスクです。
都心新築の不動産は、人口が保たれNOIも保たれるものの、金利上昇によってADSが上昇し、キャッシュフローが削られる可能性を秘めています。
都心新築の不動産、リスクヘッジ方法
このリスクをヘッジするのは、カンタンです。
お金を手元に持っていれば良いのです。
金利が上昇すれば繰上げ返済してしまえば、問題ありません。
そもそもローンを組むときに頭金としてポンと一定額を入れておけば、ADSは推し下がるので、金利が上昇してADSが上昇しても、キャッシュフロー的には耐えられる水準を維持する可能性が高いでしょう。
逆に言うと、お金がたくさんある人ほど、都心新築の不動産へとシフトする方が、地方物件の「人口減少」というコントロールできないリスクと戦うより、懸命だと言えます。
地方中古の不動産、そのリスク
地方中古の不動産は、人口が減少するためNOIが低下していく、というリスクを抱えています。
一方、中古の不動産のため、ローン期間は新築と比べて短いと言えます。
つまり
- ADSを下げる
- NOIを上げる
のうち、ADSは返済期間を伸びないため都心新築ほど縮小できませんが、その代わり購入時は都心新築物件と比べて高利回りで、NOIが高いため、キャッシュフローが出ます。
しかしこの高いNOIは、人口減少の波を受けて、時系列的に減少しやすいと言えます。
地方中古の不動産、リスクヘッジ方法
地方中古の不動産の、人口減少によるNOI押し下げリスクをヘッジする方法は、ありません。
どれだけ努力しても、人口減少に抗う方法はありません。
ただ、都心部と比べると地主系大家が多く、不動産賃貸業としての知識が乏しいため、物件そのものに魅力がない場合が多いため、独自の魅力を作り出す事ができれば、NOIを一時的に高める事はできるでしょう。
しかし、それも人口減少と共に、時系列で減少していくはずです。
都心新築と地方中古、同じキャッシュフローならどちらが良い?
都心新築では、長期ローンによる金利上昇リスク。
地方中古では、人口減少によるNOI押し下げリスク。
共に同じキャッシュフローが出る不動産投資でも、抱えているリスクが異なるという事がわかりました。
これらを踏まえた上で、どちらが良いでしょうか?
僕の中での答えは
- 手元にお金があるなら、都心新築
- 手元にお金がないなら、地方中古
かなと思います。

金利は、いつどれくらい動くのか、あまり予想ができません。
相手が経済そのものですから、仕方ありません。予測できないと言う意味では、金利上昇リスクの方が予測は困難です。
しかし、金利上昇そのものが起こらないという可能性もあります。
一方で、人口減少はある程度予測ができますが、必ず訪れてしまいます。
予測がある程度できる、必ず起こる事のリスクと、予測は難しいが起こるかどうかはわからない事のリスク。
これらのどちらが大きいか、というのを今現在判断するのは、かなり困難です。
しかしながら、大量の現金を保有し、金利上昇リスクをヘッジしながら都心新築の不動産を持つというのは、あらゆる方向へのリスクヘッジができているので、安心できるかなと思います。
一方で、大してお金がないのにも関わらず、都心新築でキャッシュを枯渇させた状態で、スタートさせてしまうのは、リスキーかなとも思えます。
ほとんどの人は、手元にお金が余っているなんて事はないでしょうから、まずは地方中古の不動産でキャッシュリッチになってから、徐々に都心新築へとシフトしていく、という「どこかで聞いた事のある作戦」が、非常に合理的だ、というのが結論です。
どちらが良いというよりは、重要なのは
- 許容できるリスクの規模から逆算し、背負うリスクを変える
事だと思います。
不動産の資産規模が1億なら、別に地方の人口減少の余波を受けても、まあ大した事にはならないでしょう。
不動産の資産規模が10億なら、潜在リスクをキチンとヘッジしなければ、自分1人では背負いきれない可能性があります。
都心新築と地方中古、共に同じキャッシュフローが出たとしても、リスクの性質が異なります。
自分が抱える事のできるリスクを、資産規模からよく考えて
- 許容できるリスクの規模から逆算し、背負うリスクを変える
事を、意識する事がこれからの日本の不動産投資界隈では、重要になると思っています。